全国茶品評会において19年連続産地賞を受賞する八女市では現在、茶業のスマート農業化が進められています。
生産者やすまき作り職人、手摘み技術者の高齢化が進み、生産量減少、後継者不足が大きな課題となっている「八女伝統本玉露」の生産を持続可能な農業にする狙いです。
平成27年にGI(地理的表示保護制度)に登録された伝統的な栽培技法で作られる「八女伝統本玉露」を作るには、収穫前、概ね20日程度、すまき(稲わら等)で日光を遮り、全て手摘みで収穫しなければならず、長年の経験に裏付けられた高度な技術が必要となっています。
県農林業総合試験場八女分場は、昨年2月から星野村の茶生産者6組にIoT(Internet of Things)機器を貸し出し、茶園に設置し情報収集や分析を行っています。
このIoT機器は、気温、照度、土壌温度、土壌水分含量に加え、高感度カメラで新芽の生育状態などの情報をリアルタイムでスマホ画面で確認できます。また、情報は全て蓄積されており、分析に活用できます。
また、栽培ノウハウや技術をデータ化することで、経験値のない人でも農作業が可能となる新規生産者向け栽培マニュアルを作ることも可能だといいます。
昨年、茶園にIoT機器を設置した倉住健吾さん(29)は、「それまで自分の感覚だけで栽培管理をやっていたけど、実際に蓄積されたデータを見ると感覚とかなりズレがあり驚いた。また、茶園に行かなくても情報が見れるので、水管理や施肥管理など素早く対応でき品質向上に繋がった」と笑顔で話していました。
角重和浩八女分場長は「今年は、機械設置2年目となるので、温度や照度データ等をより詳細に分析し、最適な被覆タイミングなどを決めるための管理データを集めたい。また、蓄積したデータを解析しマニュアル化を進めていきたい」と話していました。
倉住さんは「周りの生産者も高齢化が進み、茶園も減っていっている。今、自分が管理する茶園の面積を維持していくのはもちろん、データ蓄積によるマニュアル作成などの環境づくりを進め、『八女伝統本玉露』づくりを後世にしっかり継承していきたい」と力強く話していました。
IoT(Internet of Things)とは、コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在する様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。
